『灰色の部屋』

イーデン・フィルポッツ 『灰色の部屋』

何これ?
訳者があとがきで「定義しにくい小説」と書いているけど、僕の定義では悪い意味での「バカミス」です。

以下ネタバレ。

舞台はイギリスの田舎屋敷。そこには灰色の部屋と呼ばれる、一夜を過ごした者は必ず死ぬという部屋があり、実際序盤から人がポンポン死にます。トリックも犯人も動機も予測がつきません。登場人物は一人のキ印牧師を除いて人畜無害な連中ばかりで、そのキ印もすぐ死にます。ロンドンから鳴り物入りで捜査にやって来た自信過剰気味な刑事も、到着して部屋に入るやすぐ死にます。しかも昼に。ここで一瞬「おおっ」となるのですが、盛り上がりはここだけ。本当に。あとは冗長な展開が続き、終盤にこれまでの話と全く関わりのないイタリア人の80過ぎのじいさんが出てきてイタリアの歴史や文化やらの講釈を垂れながら、スコットランドヤードの刑事も解けなかったトリックを見破り、あっさり事件を解決します。このじいさんはホームズやフレンチ警部のような有名な探偵ではありません。したがって、いきなり登場されても感動も高揚もありません。そいつが事件を解決します。しかも犯人は…という反則。不可能犯罪ものか、と期待しているととんでもない肩透かしを食らいます。もう一度言います。
何これ?
面白かったのは誤植が多かったこと。地名人名から、「われわれ」とあるべき箇所が「あれわれ」になっていたり。「刑事」が「軽自」になっているのを見た時は笑ってしまいました。『赤毛のレドメイン家』や『闇からの声』は良かったんですけどね。もしこれを最初に読んでいたら、その後フィルポッツの他の作品に手を出すことはなかったでしょう。僕にとってはマーガレット・ミラーなんかもそうだったのですが、ひとりの作家にハマるには、作品を読む順番がとても大事なのだとあらためて実感させられました。